不動産の売却は、人生でそう何度も経験することではありません。そのため、いざ売却を始めようとすると専門用語の壁にぶつかる方がほとんどです。
特に混乱を招きやすいのが「仲介(ちゅうかい)」と「一般媒介(いっぱんばいかい)」という言葉です。
- 「仲介をお願いするのと、一般媒介にするのは何が違うの?」
- 「一般媒介のほうが手数料が安いって本当?」
- 「自分はどの契約方法を選べば、高く早く売れるの?」
このような疑問を持ったまま曖昧に契約を進めてしまうと、数百万円単位で損をしてしまう可能性もあります。
結論から申し上げますと、「仲介」と「一般媒介」は比較するものではなく、「仲介という大きなサービスの中に、一般媒介という契約プランがある」という関係性です。
この記事では、不動産業界の仕組みを噛み砕いて解説し、あなたが選ぶべき「最適な契約形態」を判断できるまでの知識を完全網羅してお届けします。
- 一般媒介と仲介の言葉の正しい定義
- 仲介手数料に違いはあるのか?(シミュレーション付)
- 「囲い込み」を防ぐための契約選び
- あなたに合った契約形態の診断チェックリスト
「一般媒介」と「仲介」の決定的な違いとは?

まずは言葉の定義を明確にしましょう。ここを理解しておくと、不動産会社の営業マンとも対等に話せるようになります。/
仲介(ちゅうかい)=「行為・サービス全体」のこと
「仲介」とは、不動産の売主と買主の間に入り、取引を円滑に進めて契約を成立させる「業務そのもの」を指します。
具体的には以下の業務が含まれます。
- 物件の査定(価格の算出)
- 広告・宣伝活動(SUUMOやHOME’Sへの掲載など)
- 購入検討者の内覧対応
- 重要事項説明書・売買契約書の作成
- 引き渡し・決済のサポート
これら一連のサービスを総称して「仲介」と呼びます。法律用語では「媒介(ばいかい)」と表現されることもありますが、日常会話やビジネスの実務では「仲介」と呼ぶのが一般的です。
媒介(ばいかい)=「契約の種類」のこと
一方、今回キーワードとなっている「一般媒介」の「媒介」とは、不動産会社に仲介業務を依頼する際に交わす「契約ルールの名称」です。
宅地建物取引業法という法律により、不動産会社に売却を依頼する際は、必ず「媒介契約書」を結ばなければならないと決められています。
その契約プランには、以下の3つの種類があります。
- 一般媒介契約(いっぱんばいかい)
- 専任媒介契約(せんにんばいかい)
- 専属専任媒介契約(せんぞくせんにんばいかい)
結論:包含関係で理解しよう
つまり、関係性を整理すると以下のようになります。
その際、依頼のルールとして「一般媒介(契約プラン)」を選びます。
「仲介にするか、一般媒介にするか」と悩むのは、「スポーツジムに入会するか、平日夜会員にするか」と悩むのと同じで、次元の違う話を比較してしまっていることになります。
【金銭面】一般媒介と仲介で「手数料」に違いはある?
売主様にとって最も気になるのが「お金」の話でしょう。「一般媒介契約にすると、手間がかかる分安くなるのでは?」「専任のほうが高いのでは?」といった疑問について解説します。
どの契約形態でも手数料の上限は同じ
結論から言うと、3つのうちどの契約形態を選んでも、仲介手数料の上限額は変わりません。
仲介手数料は「成功報酬」であり、その上限は法律で厳格に定められています。
| 売買価格(税抜) | 仲介手数料の上限(速算式) |
|---|---|
| 200万円以下 | 売買価格 × 5% + 消費税 |
| 200万円超〜400万円以下 | 売買価格 × 4% + 2万円 + 消費税 |
| 400万円超 | 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税 |
シミュレーション:3,000万円で売却した場合
例えば、あなたの物件が3,000万円で売れた場合、一般媒介でも専任媒介でも、手数料の上限は以下の通りです。
税込(10%):105万6,000円
この金額はあくまで「上限」ですが、一般的な不動産取引ではこの上限額がそのまま請求されるケースが大半です。
「損得」は手数料率ではなく「売却価格」で決まる
手数料が変わらない以上、どちらが得かを決めるのは「どちらの契約のほうが、より高く売れるか」という点に尽きます。
- 一般媒介の戦略:
複数社に競争させて、一番高い価格のお客様を見つけてもらう。 - 専任媒介の戦略:
1社にじっくりと時間をかけさせ、物件の魅力を高めるプロモーション(ホームステージングなど)を行って高く売る。
物件の特性によって「どちらが高く売れるか」の正解は異なります。手数料の差を気にするよりも、この「売却戦略」の違いを理解することが重要です。
一般媒介は何が違う?3つの媒介契約を徹底比較
では、3つの契約形態の具体的な違いを比較表で見ていきましょう。
最大の違いは「他社への依頼ができるかどうか」と「情報共有の義務レベル」です。
| 項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
|---|---|---|---|
| 他社への依頼 | 可(何社でもOK) | 不可(1社のみ) | 不可(1社のみ) |
| 自己発見取引(自分で買主を見つける) | 可 | 可 | 不可 |
| 契約期間 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
| レインズ登録義務 | なし(任意) | あり(7日以内) | あり(5日以内) |
| 売主への報告義務 | なし(任意) | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
【重要】レインズ(REINS)とは?
表に出てくる「レインズ」とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営する、不動産会社専用の物件情報共有ネットワークのことです。
ここに登録されると、あなたの物件情報は瞬時に全国の不動産会社に共有されます。つまり、登録した会社1社だけでなく、全国の不動産会社があなたの物件の買主を探してくれる状態になります。
- 専任・専属専任の場合:法律で登録が義務付けられているため、情報の拡散が保証されます。
- 一般媒介の場合:義務がないため、依頼主が強く要望しない限り、登録されない(=情報が広がらない)ケースが多いです。
一般媒介を選ぶ最大のメリット「囲い込み防止」とは

一般媒介契約をあえて選ぶ人の多くは、不動産業界の悪しき慣習である「囲い込み」を避けることを目的としています。
不動産業界の闇「囲い込み」の仕組み
通常、不動産仲介の手数料は「売主」と「買主」の双方から受け取ることができます(これを「両手仲介」と呼びます)。
しかし、1社に任せる「専任媒介」の場合、悪質な業者は以下のような行動をとることがあります。
- 他社から「その物件をお客様に紹介したい」と問い合わせがあっても、「商談中です」と嘘をついて断る。
- 物件情報を市場に出さず、自社で見つけた買主だけに売ろうとする。
これが「囲い込み」です。自社で両方の手数料を得るために情報を隠蔽する行為で、売主にとっては「売却のチャンスを逃す」「安く売られる」という大きなデメリットになります。
一般媒介なら「囲い込み」は不可能
一般媒介契約では、A社、B社、C社と同時に依頼を出します。
もしA社が情報を隠しても、B社やC社がオープンに宣伝活動を行っていれば、買主はそちら経由で物件を知ることができます。
つまり、複数社に依頼することで相互監視の状態を作り出し、情報の透明性を確保できるのが一般媒介の最大の強みなのです。
【診断】あなたはどっち?一般媒介が向いている人・不向きな人

ここまで読むと「じゃあ絶対に一般媒介がいいのでは?」と思うかもしれませんが、そう単純ではありません。
物件の条件によっては、一般媒介にすることで「各社がやる気をなくし、放置される」というリスクがあるからです。
以下のチェックリストで、ご自身の状況を確認してみてください。
一般媒介が向いているケース(勝ち組パターン)
- ✔ 人気エリア・駅近・築浅である
放っておいても売れる「ドル箱物件」なら、不動産会社は競って販売活動を行います。 - ✔ 自分で複数社との連絡・調整ができる
3社に頼めば、内覧調整の手間も3倍です。マメな連絡が得意な人に向いています。 - ✔ 不動産会社を信頼しきれていない
「囲い込み」を絶対に避けたい、自分の目で市場の反応を確かめたいという心理が強い場合。 - ✔ 近所に知られずに売りたい
レインズに登録せず、特定のお客様だけに水面下で紹介してもらう活動を複数社に依頼する場合。
専任媒介が向いているケース(安心パターン)
- ✔ 郊外・駅から遠い・築古・リフォームが必要
売るのに工夫が必要な物件は、1社に責任を持たせてじっくり広告費をかけてもらう方が結果が出ます。 - ✔ 忙しくて電話対応などの時間が取れない
窓口を1つに絞れば、報告も内覧調整もその1人の担当者と話すだけで済みます。 - ✔ 鍵を預けて内覧をお任せしたい
空き家を売る場合など、鍵を業者に預けるなら管理上の責任が明確な専任媒介が必須です。 - ✔ 付帯サービスを利用したい
「ハウスクリーニング無料」「買取保証」などの特典は、専任媒介契約者限定のサービスであることが多いです。
よくある質問(FAQ)
最後に、一般媒介と仲介に関してよく寄せられる質問に回答します。
- Q. 大手不動産会社は一般媒介を受けてくれないって本当?
- A. 基本的には受けてくれますが、消極的な場合もあります。
大手各社は自社のネットワークが強いため、「うちに任せてくれれば十分売れますよ」と専任を強く勧めてくる傾向があります。しかし、人気物件であれば一般媒介でも断られることはまずありません。 - Q. 一般媒介で3社に頼んだら、仲介手数料も3倍かかりますか?
- A. いいえ、手数料を支払うのは「契約を決めた1社だけ」です。
残りの2社に対しては、たとえどれだけ広告費を使ってくれていたとしても、1円も支払う必要はありません(これが不動産会社にとってのリスクでもあります)。 - Q. 契約期間の途中で解約できますか?
- A. 一般媒介であれば、いつでも電話一本で解約できるケースがほとんどです。
専任媒介の場合は「3ヶ月」という期間縛りがあり、正当な理由なき解約には違約金や広告費の実費請求が発生する可能性があるため注意が必要です。
まとめ
この記事では、「一般媒介」と「仲介」の違いについて詳しく解説してきました。
- 仲介(ちゅうかい):不動産売買をサポートする業務全体のこと。
- 一般媒介(いっぱんばいかい):仲介を依頼する際に、複数社と契約できるプランのこと。
「一般媒介」は自由度が高く、囲い込みのリスクがない魅力的な契約形態ですが、物件によっては「誰からも本気で相手にされない」というリスクも孕んでいます。
最終的な判断基準はこれに尽きます。
「あなたの物件は、不動産会社が競ってでも扱いたい物件か?それとも、1社に丁寧に販売してもらう必要がある物件か?」
この見極めは、一般の方には難しいものです。
まずは一括査定などを利用して複数の不動産会社の話を聞き、「一般媒介でも積極的にやってくれますか?」と聞いてみるのも一つの手です。その反応を見て、信頼できるパートナーを見つけてください。











